大阪地方裁判所 平成10年(わ)827号
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官植田浩行及び弁護人(私選)黒田修一各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告髙山建設株式会社を罰金一五〇〇万円に、被告人高山清吉を懲役一〇月にそれぞれ処する。
被告人高山清吉に対し、この裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人髙山建設株式会社(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、高圧電線用鉄塔建設工事業等を営む資本金一五〇〇万円の株式会社であり、被告人高山清吉(以下「被告人高山」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人高山は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注費を計上する方法などにより所得を秘匿した上、平成七年四月一日から同八年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が三億二七七七万九八八二円(別紙修正損益計算書参照)、これに対する法人税額が一億二一九六万八二〇〇円であるにもかかわらず、同年五月三一日、同市西難波町一丁目八番一号所在の所轄尼崎税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億三二七七万二八九八円で、これに対する法人税額が四八八四万六〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納付期限を徒過させ、もって、不正の行為により、右事業年度における正規の法人税額との差額七三一二万七六〇〇円(別紙ほ脱税額計算書参照)を免れたものである。
(証拠の標目)(括弧内の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求の甲乙の番号を示す。)
一 被告人高山の公判供述
一 被告人高山の検察官調書(乙七)
一 秋山輝雄こと黄在達(二通。甲一三、一四)及び村上雅夫(甲一五)の各質問てん末書
一 脱税額計算書(甲二)
一 証明書(甲三)
一 「所轄税務署の所在地について」と題する書面(甲五)
一 脱税額計算書説明資料(甲六)
一 査察官調査書六通(甲七~一二)
一 商業登記簿謄本五通(乙一~五)
(法令の適用)
罰条
1 被告会社 平成一〇年三月三一日法律第二四号による改正前の法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)
2 被告人高山 平成一〇年三月三一日法律第二四号による改正前の法人税法一五九条一項
刑種の選択 被告人高山につき懲役刑選択
刑の執行猶予 被告人高山につき刑法二五条一項
(量刑の理由)
本件は、被告会社の代表取締役である被告人高山が、架空の領収書をもとに架空外注費を計上するなどの方法により一年間被告会社の業務に関し法人税の支払を免れたという法人税法違反の事案である。
本件犯行は、平成八年三月期に阪神・淡路大震災の復興事業により大幅な利益が上がり、多額の法人税を納めなければならないことが見込まれたため、不況に備えて少しでも余裕資金を蓄えたいなどの理由から敢行されたもので、犯行の動機に酌量の余地はない。そして、犯行の態様は、額面の一割の謝礼を払うとの約定のもとに架空の領収書を発行してもらって架空の外注費を計上し、さらに、架空外注費のみならず多額の架空の特別賞与を計上するなど巧妙かつ計画的で悪質である上、右犯行による脱税金額は約七三〇〇万円と多額であって、本件の犯情は甚だ芳しくなく、被告人らの刑責を軽視することはできない。
しかしながら、他方、被告人高山は本件を反省し、今後は一切脱税などの不正行為をしない旨誓っていること、本件に関し税務当局による査察が行われた後、被告会社において法人税の修正申告を行い、法人税の本税、延滞税、重加算税を全て納付し、その他の諸税についても同様の納付を済ませていること、本件については、震災復興工事による利益を脱税した事案として新聞報道もされ、被告会社は兵庫県、尼崎市、その他元請け三社から指名停止を受けるなど社会的・経済的制裁を受けていること等の酌むべき事情も認められる。そこでこれらの事情も併せ考慮して、被告会社に対する罰金刑は主文掲記の程度にとどめるとともに、被告人高山に対しては懲役刑の執行を猶予することとした次第である。
よって、主文のとおり判決する(求刑・被告会社に対しては罰金二〇〇〇万円、被告人高山に対しては懲役一年)。
(裁判官 足立勉)
修正損益計算書
髙山建設株式会社
自 平成7年4月1日
至 平成8年3月31日
<省略>
<省略>
ほ脱税額計算書
髙山建設株式会社
自 平成7年4月1日
至 平成8年3月31日
<省略>